テーラーメイドな税務会計戦略構築
03-3256-9069
土地開発公社経理基準要綱Q&A解説
Q&Aについて主な質問を以下のように並べました。条文はすべて経理基準要綱上の条文番号です。
1. 適用の一般原則
公有地の拡大の推進に関する法律(昭和47年法律第66号。以下「法」という。)及び公有地の拡大の推進に関する法律施行規則(昭和47年建設省令自治省令第1号。以下「令」という。)に定めのあるもののほか、この要綱の定めるところによるものとし、この要綱に定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとされるが、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」とは何を意味するか。
A
ここでいう「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」とは、企業会計に対する権威を有すると一般に認められている組織により設定された様々な会計基準を含む広い概念である。企業会計に対する権威を有すると一般に認められている組織としては、財務省企業会計審議会、日本公認会計士協会、企業会計基準委員会等がある。具体的な意見書・報告の例をあげれば、昭和24年7月9日に経済安定本部企業会計制度対策調査会が設定した「企業会計原則」のほか、昭和37年11月8日に大蔵省企業会計審議会が設定した「原価計算基準」さらに「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い」等の日本公認会計士協会会計制度委員会報告等がある。
2. 特定土地(再取得される見込みがなくなったの意味
第3条第1項第11号の特定土地の定義において、地方公共団体等により再取得される見込みがなくなったとは具体的にどのような場合をいうのか。
A
特定土地について地方公共団体等により再取得される見込みがなくなった場合を一義的に定義付けることは困難であるが、書面上、地方公共団体等により再取得されないことが明確になった場合のみならず、客観的見地から諸般の事情を考慮した結果、実質的に再取得されない蓋然性が高いと認められる場合をも含むこととなる。
実質的に再取得されない蓋然性が高いと認められる場合の例としては、地方公共団体等が作成した中長期計画等において将来の公共事業を中止した場合や、地方公共団体等による再取得の見込みがなく公社が民間売却を実施する場合等が挙げられる。公社の保有する土地を特定土地と位置付けるか否かは、地方公共団体等と公社との十分な協議の上での対応が望まれる。また、公社においては、特定土地と位置付けることの重要性に鑑み、理事会等の意思決定機関における承認が必要と思われる。
4. 完成土地等(販売可能な状態の意味)
「完成土地等」の分類において、第3条第1項第12号 イ 「販売可能な状態にある土地」の解釈として、事業計画における全ての構築物の整備等の造成工事が完了した土地とするのか。それとも、一部の構築物の整備が未完成であっても、販売可能な状況であれば「販売可能な状態にある土地」とするのか。
A
「販売可能な状態にある土地」の判断については、個別的に判断せざるを得ないが、事業計画における売り出し計画がある場合には、この売り出し計画を基準に判断すべきである。たとえば、宅地造成事業において、部分的に区画道路が整備され、上下水道、ガス、電気等の配管配線工事が完了し、住宅の建設可能な状態になったときに売り出す計画になっている場合には、当該区画については、計画どおりの状態になったときに「販売可能な状態にある土地」と言うことができる。
5. 完成土地等の等の意味
第3条第1項第12号 ロ の状況にある土地を「完成土地等」に含めている理由は何か。
A
土地造成事業において、開発が長期にわたり、不動産開発計画の実現可能性が認められないと判断されるものについては、他の「開発中土地」とは区別し、開発を行わない不動産として、「完成土地等」の「等」のなかに含めて整理することとした。この判断基準は、「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い(日本公認会計士協会 監査委員会報告第69号)」の「7.不動産開発計画の実現可能性に関する判断指針」を準用したものである。
このように、不動産開発計画の実現可能性が認められないと判断されるものについては、開発利益が見込めないため、土地等の評価に用いる正味実現可能価額の算定は、原則として完成土地と同様、第25条第3項第1号によることとなる。また、第24条第3項にあるとおり、完成土地と同様、当該資産の取得又は造成に要した借入金等に対する利息を取得原価に含めないものとしている。
8. 重要な会計方針の事例
注記しなければならない重要な会計方針として、たな卸資産、固定資産及び引当金が規定されているが、これ以外に何を注記する必要があるのか。
A
第1条において、「この要綱に定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。」旨、規定されていることから、企業会計で要求されている注記事項のうち公社に該当する項目があればそれを注記しなければならない。
一般に、各公社が注記事項として検討すべきものを例示するならば、投資有価証券、費用収益の計上基準等が考えられる。また、たな卸資産、固定資産及び引当金の重要な会計方針の記載事例としては以下のようになる。
・たな卸資産の評価基準及び評価方法
○○土地・・・個別法による原価法によっております。
××土地・・・個別法による原価法によっております。
・固定資産の減価償却の方法
有形固定資産・・・定額法によっております。なお、耐用年数及び残存価額については、法人税法に
規定する方法と同一の基準によっております。
無形固定資産・・・定額法によっております。なお、耐用年数及び残存価額については、法人税法に
規定する方法と同一の基準によっております。ただし、ソフトウェア(自社使
用)については、社内における利用可能期間(5年)に基づく定額法によってお
ります。
・引当金の計上基準
・貸倒引当金
事業未収金、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権について貸倒実績率により計上しているほ
か、貸倒懸念債権等特定の債権については、債権の回収可能性を個別に検討して計上しております。
・賞与引当金
職員賞与の支給に充てるため、支給見込額基準により計上しております。
・退職給付引当金
従業員の退職による給付に備えるため、当期末における退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき
計上しております。なお、数理計算上の差異は、発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定年数
(○○年)による定額法により翌年度より費用処理しております。
・役員退職慰労引当金
役員の退職により支給する退職慰労金に充てるため内規に基づく期末要支給額を計上しております。
上記はあくまでも例示であり、全ての公社が上記の事例に当てはまるわけでは無い。公社ごとに十分検討し、重要な会計方針を記載することが必要である。
10. キャッシュ・フロー計算書の直接法と間接法
キャッシュ・フロー計算書の様式は別表において直接法が明示されているが、間接法により作成してもよいか。
A
直接法とは、「事業活動によるキャッシュ・フロー」について主要な取引ごとにキャッシュ・フローを総額表示する方法をいう。間接法とは、当期純利益に、非資金損益項目、事業活動に係る資産及び負債の増減並びに「投資活動によるキャッシュ・フロー」及び「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に含まれるキャッシュ・フローに関連して発生した損益項目を加減算して「事業活動によるキャッシュ・フロー」を表示する方法をいう。
直接法による表示を行うには主要な取引ごとにキャッシュ・フローの基礎データを用意する必要があり一定の事務手数を要するが、間接法の場合と異なり、損益計算書には表示されない期中における公社の活動を表示することができる。例えば、損益計算書上の収益・費用(原価)は販売が行われてはじめて表示されるが、直接法によるキャッシュ・フロー計算書には、販売以前の開発段階での公社の活動がキャッシュ・フローにより活動内容ごとに表示される。このような直接法の趣旨を生かすため、公社のキャッシュ・フロー計算書は原則として直接法によるものとする。
12. 流動資産の有価証券
旧要綱では有価証券が流動資産に列記されていたが、新要綱では削除されている。旧要綱での流動資産の有価証券に計上していたものは、新要綱適用後はどのように表示すればよいのか。
A
旧要綱での流動資産に記載されていた有価証券は、新要綱では「投資有価証券」の科目をもって固定資産の区分に表示する。近年、企業会計においてもその保有する有価証券については「金融商品に係る会計基準」の適用に伴い、財務諸表上の表示も従前の流動資産から固定資産の区分に表示されるに至っている。
新要綱の第1条において、「この要綱に定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。」と規定されている趣旨を踏まえ、公社の会計においても企業会計の基準との均衡を図る必要があることから、固定資産の区分に表示することとした。
14. 賃貸事業目的あるいは自社用不動産の表示
公社が販売目的で保有していた土地を、賃貸事業目的あるいは自社用の不動産とする場合、流動資産ではなく他の表示区分への変更を検討する必要があるか。
A
そのような場合には保有目的の変更に該当するため、当該土地の帳簿価額を流動資産から固定資産へ表示区分を変更する必要がある。造成地に事業用借地権を設定し、賃貸する場合には、投資その他の資産の区分における「賃貸事業の用に供する土地」に表示区分を変更し、自社用の不動産とする場合には有形固定資産の区分における「土地」に表示区分を変更することになる。ただし、先行取得事業用地を暫定的に賃貸する場合には、表示区分の変更は要しないこととする。
15. ソフトウエアの処理
無形固定資産の範囲にソフトウェアが明確に規定されていないが、公社が利用するソフトウェアはどのように会計処理すべきか。また、表示についてはどうか。
A
無形固定資産として計上した自社利用のソフトウェアについては、公社がその利用の実態に応じて最も合理的と考えられる減価償却の方法を採用すべきものであるが、収益との直接的な対応関係が希薄な場合が多く、物理的な劣化を伴わない無形固定資産の償却であることから、一般的には定額法による償却が合理的であると考えられる。利用可能期間を基礎として償却を行う場合の耐用年数については、近年の技術革新の状況等に配慮し、原則5年以内の年数とする。なお、ソフトウェアの減価償却の方法に関し、重要な会計方針として開示すべき項目及び記載上の留意点は以下のとおりである。
〔自社利用のソフトウェアの減価償却方法に関する開示〕
・自社利用のソフトウェアに関して採用した減価償却の方法
・見込利用可能期間(年数)
17. 減損会計の適用
公社の有形固定資産に対して、「固定資産の減損に係る会計基準」は適用されるのか。
A
第1条において、「この要綱に定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。」旨、規定されていることから、公社の保有する固定資産に対しても原則として「固定資産の減損に係る会計基準」が適用されることになる。
固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理である。これは、有価証券等の金融商品に適用される時価評価とは異なり、資産価値の変動によって利益を測定することや、決算日における資産価値を貸借対照表に表示することを目的とするものではなく、取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額である。
このように、固定資産の減損処理はその対象はあくまで固定資産であって、貸借対照表の流動資産に計上される土地ではないことに十分留意する必要がある。流動資産に表示された事業目的の土地については、第25条の規定に基づく評価の実施により対処する必要がある。
なお、企業会計においては、「固定資産の減損に係る会計基準」は平成17年4月1日以後開始する事業年度から適用される。
18. 代替地における再取得等の等とは
法第17条第1項第1号に係る代替地のうち、取得原価相当による再取得等が見込まれる代替地は、第25条の規定に基づく評価の対象から除かれている。この対象外となる「再取得等」の「等」は具体的にどのような場合を意味するのか。
A
「再取得等」の「等」とは、公社保有土地の売却にあたり、当該土地の取得経緯等を考慮して地方公共団体等による損失の補てんがある等、取得原価相当額による実質的な買い取りの保証があると認められる場合を意味している。そのような場合は、地方公共団体等による取得原価相当額での買い取りが予定されている場合と同様、資金的裏付けが保証されていることから、評価替の対象にする必要がないと解するものである。
このような地方公共団体等による取得原価相当額の実質的な保証は、本来は書面上明確にすべきであるが、当該書面がなくとも地方公共団体等から取得原価相当額による実質的な買い取りの保証があると客観的に認められる場合には「再取得等」に含まれると考える。
なお、地方公共団体等が、当該代替地を購入する為に公社が行なった資金借入について債務保証を行なっているのみでは、地方公共団体等による取得原価相当額での買い取りが予定されている場合とはいえないため、「再取得等」には該当しない。
19. 利息の算入
利息の算入については、土地ごとにどのような処理になるのか。
A
土地ごとの利息参入の処理は以下のとおりである。
注(1)法第17条第1項に掲げる事業により取得される土地の所有者等に対して、その土地に代わる土地として譲 渡するために公社が取得した土地をいう。
注(2)「再取得等」とは、損失の補てんがある場合等を含む。
注(3)法第17条第1項第1号の規定により公社が取得した土地のうち、地方公共団体等により再取得される見込 みがなくなった土地をいう。
20. 原価計算の適用
土地の取得原価について、間接経費や共通経費の配賦はどのような基準に従うべきか。
A
公社の原価計算は、昭和37年11月8日に大蔵省企業会計審議会が設定した「原価計算基準」に準拠して実施し、間接経費や共通経費の土地勘定への配賦に当たっては公社の事業の実態に即して適正な配賦基準を選定しなければならない。参考として、配賦基準の一例を示すならば以下のようなものが考えられる。
①共通部門の給与費について、各勘定に属する職員に支給する給与総額の割合により配賦する方法
②事務所賃借料について、各勘定に属する部門の占有面積の割合により配賦する方法
③納付消費税について、勘定別に算定した納付消費税の割合により配賦する方法
25. 土地の区分毎の評価方法
第25条の規定に基づく評価については、土地ごとにどのような処理になるのか。
A
土地ごとの第25条の規定の適用は以下のとおりである。
注(1)法第17条第1項に掲げる事業により取得される土地の所有者等に対して、その土地に代わる土地として譲 渡するために公社が取得した土地をいう。
注(2)「再取得等」とは、損失の補てんがある場合等を含む。
注(3)法第17条第1項第1号の規定により公社が取得した土地のうち、地方公共団体等により再取得される見込 みがなくなった土地をいう。
26. 賃貸事業の用に供する土地の減損会計
「公有地の拡大の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令」(平成16年政令第407号)に基づき、造成地に事業用借地権を設定し、賃貸を行う土地については、流動資産から固定資産へ振り替えることになる。この場合、当該土地は第25条の規定に基づく時価による評価の対象となるのか。また、対象とならない場合、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用することになるのか。
A
当該土地は、第25条の評価損の計上規定の適用対象外であり、固定資産の部に「賃貸事業の用に供する土地」として表示する。「賃貸事業の用に供する土地」は固定資産であることから、原則「固定資産の減損に係る会計基準」を適用することになる。
29. 正味実現可能価額の算定の具体例
正味実現可能価額の算定には、具体的に何を用いればよいか。
A
時価の算定においては、一般に見積りや主観的な判断に依拠する場合が少なくない。このため、時価の算定に当たっては、その客観性及び合理性、開発計画の実現可能性並びに公社の過去の開発実績等を考慮の上、公社の判断により慎重に選択する必要がある。
販売見込額の基礎となる時価としては、不動産鑑定士による鑑定評価額が適切と考えられるが、公示価格、都道府県基準値価格、路線価による相続税評価額、固定資産税評価額を基にした倍率方式による相続税評価額等も妥当と考えられる。また、近隣の取引事例から比準した価格も、ある程度客観性を備えた価格と考えられる。
日本公認会計士協会が公表している「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い(監査委員会報告第69号)」の【付録1】販売用不動産等の評価額の例示、【付録2】一般に公表されている地価の概要が実務上の参考になる。
(1)【付録1】販売用不動産等の評価額の例示(日本公認会計士協会監査委員会報告第69号より抜粋)
1 .開発を行わない不動産又は開発が完了した不動産
2 .開発後販売する不動産
2)【付録2】一般に公表されている地価の概要(日本公認会計士協会監査委員会報告第69号より抜粋)
30. 時価の算定方法の変更
第25条の規定に基づく評価の実施において、適用される時価の算定方法を毎期、変更することはできるか。
A
適用される時価の算定方法については、毎期継続して適用し、評価のための前提条件に変更がない限り前年度と同一の方法により評価を行わなければならない。従って、適用される時価の算定方法を正当な理由なくみだりに変更することは認められない。
ただし、特定の土地の評価に影響を与えるような事象又は状況の変化に起因して適用される時価の算定方法を変更したり、また、状況に変化がなくとも、より正確な時価の算定を意図して不動産鑑定評価を実施するなど、適用される時価の算定方法を変更することに合理的な理由があると認められる場合には、当該変更は妥当なものとして取り扱う。
31. 時価の算定方法の土地毎の採用
適用される時価の算定方法について、土地ごとに異なる方法を採用することはできるか。
A
適用される時価の算定方法について、土地ごとに異なる方法を採用することは可能である。土地の時価評価の方法は1つではなく、その価格形成の特殊性を考慮すれば、複数の時価評価の方法の中から特定の1つの方法を選択することとなり、画一的に全ての土地に対して同一の時価評価の方法を適用することには限界がある。
また、土地の評価の区分は、販売を目的として保有している土地であることから、販売時の区分あるいは単位で時価を算定することとなる。例えば、土地造成事業において、住宅用地の造成事業を行なっている場合には、販売区画ごとに時価を算定すべきである。
32. 50%以上下落の例外はあるか
新要綱は、「時価が取得原価に比べておおむね50%以上下落している場合」を第25条の規定に基づく評価の実施の判断基準としている。では、それ以外の判断基準として、例えば30%以上下落といった公社独自の基準を採用することは認められるか。
A
個々の販売用不動産等の時価がおおむね50%以上下落していない場合であっても、全体の含み損の金額に重要性があり、公社の財政状態及び経営成績についての判断を誤らせるような事態を招くと認められる場合には、50%以外の他の適切な基準を検討する必要がある。
公社の財政状態をより適正に表示する為、例えば、30%を基準として採用し、この場合に評価替を実施することも可能である。ただし、当該独自の基準については、毎期継続して採用することが求められる。
36. 近い将来明らかに回復する見込みがあると認められる場合とは
「近い将来明らかに回復する見込みがあると認められる場合」とは、どのような場合か。
A
回復可能性の検討に当たっては、日本経済や地域経済の状況、地価の動向のマクロ的な要因だけでなく、対象となっている土地の個別・具体的な回復可能性の検討が必要になる。例えば、土地利用規制の解除、開発計画における道路や鉄道等の具体的計画が確認でき、相当の期間内に時価がおおむね取得原価以上となる見込みがあることが必要である。
時価が取得原価より著しく下落しているが、その時価が近い将来明らかに回復する見込みがあると認められるため、評価替を実施せず取得原価を付したときは、その旨を注記する必要がある。この注記に当たっては、評価替を実施せず取得原価で評価している土地の金額も記載することとする。
39. 低価法の採用
低価法を適用することはできるか。
A
25条の規定に基づく評価は原価法の枠内に位置付けられるものであり、時価が取得原価より著しく下落したときに、近い将来明らかに回復する見込みがあると認められる場合を除き、簿価を時価に評価替えする評価方法である。これに対し、低価法は時価が取得価額よりも下落した場合に、時価による方法を適用して算定する評価方法である。
新要綱では、原価法の枠内に位置付けられる第25条の規定に基づく評価を採用しており、低価法については特段の規定を置いていないが、これは低価法の適用を排除する趣旨ではない。公社が独自の判断で、より保守的な会計処理を志向して低価法を適用することは認められる。ただし、一度低価法を適用したならば継続適用が求められ、みだりにこれを変更してはならない点には留意する必要がある。
41. 土地評価損の処理実例
次の場合の土地評価損の計上額はどのようになるのか。
① 第3条第1項第12号ロに該当する完成土地等について、用地取得費及び利息算入額の合計で50,000千円が
帳簿価格として現在記録されている。
② 今後発生するであろう造成費用等経費を10,000千円、販売経費等見込額を3,000千円と見積もっている。
③ この土地が完成した時の販売見込額を30,000千円と見積もっている。
A
完成後販売見込額 30,000千円
造成・建築工事原価今後発生額 10,000千円
販売経費等見込額 3,000千円 13,000千円
完成土地等の時価 差引 17,000千円
帳簿価格 50,000千円
土地評価損 差引 △33,000千円
33,000千円÷50,000千円=66%≧50%
となるため、土地評価損を33,000千円計上することとなる。
なお、時価をもって貸借対照表価額とした場合は、財務諸表にその旨及び当該評価換えを行った年月日、当該評価換え前の帳簿価額並びに評価損に関する会計処理の方法を貸借対照表に注記しなければならない。
44. 地価変動等調整引当金の計上の有無
新要綱で、新たに地価変動等調整引当金を計上することは可能か。
A
地価変動等調整引当金が引当金としての31―1で示した4要件を満たしているか否かが問題となる。地価変動等調整に係る損失については、発生の可能性が不明確であり、その金額を合理的に見積ることも困難と考えられることから、新要綱の取扱い上、新たに地価変動等調整引当金を計上することについて、引当金の4つの要件を満たしているか否かを十分検討することが必要である。例えば、地価変動等調整引当金の計上根拠を「地方公共団体等と取り決めた額とする」、「土地の帳簿価額の○%とする」「当期純利益の○%を計上する」等は認められない。
46. 退職給付引当金
要綱改正以前の退職給与引当金から改正後は退職給付引当金の計上が求められるが、具体的な計算方法はどのようにすべきか。
A
退職給付引当金の計算は、退職給付に係る会計基準(平成10年6月16日企業会計審議会) 及び退職給付会計に関する実務指針(中間報告)(会計制度委員会報告第13号 平成11年9月14日最終改正日平成15年9月2日日本公認会計士協会)に準じて計算することとなる。
公社においては、職員数が300人未満のところが多く、一般的に職員数が少ないことから、退職給付会計における簡便法を採用するところが多くなると思われる。簡便法については、退職給付会計に関する実務指針(中間報告)(会計制度委員会報告第13号 平成11年9月14日最終改正日平成15年9月2日日本公認会計士協会)を参考にすることとする。
48. 繰延資産の廃止理由
繰延資産が廃止されたのは何故か。
A
繰延資産は、支出した費用のうちその効果が複数事業年度に及ぶものについて、翌期以後の期間に配分して費用を処理し、経過的に貸借対照表の資産の部に記載することが認められるものである。しかしながら、その効果がどの程度であるかは不明瞭であり、合理的な費用配分の方法がなく、会計処理に恣意性が介在するおそれがあるため、近年は繰延資産を計上しないことが一般的となっている。
また、繰延資産は過去における支出を将来の収益と対応させるために計上される資産であるが、それ自体に将来における換金可能性はなく、新要綱においては資産の正味実現可能価額を重視していることから、そのような換金可能性のない資産が計上されることは適切ではない。支出に適切な原価性があれば資産の取得原価に算入することが認められており、原価性のない支出はすべて期間費用として処理することが適切であると考える。
なお、前払費用も繰延資産もともに支出が行われている点では同じだが、前払費用が未だ提供を受けていない役務に対する支出であるのに対し、繰延資産は既に提供を受けている役務に対する支出である。
54. キャッシュ・フロー計算書導入理由
新要綱ではキャッシュ・フロー計算書が新たに導入されたが、その目的はどのような点にあるか。
A
企業会計では、会計基準の国際的調和化の要請を背景として、キャッシュ・フロー計算書が既に財務諸表の一つとして位置付けられており、損益計算書だけでは必ずしも十分に知り得ない企業のキャッシュ・フロー情報が開示されている。公社においてもそのキャッシュ・フローの状況を利害関係者に示す要請があることを勘案し、新要綱では公社が作成する財務諸表の一つとしてキャッシュ・フロー計算書を導入している。
損益計算書はあくまで損益の状況を示すものであり、損益とキャッシュ・フローとは必ずしも同義ではない。損益計算上は利益が発生していてもキャッシュ・フローの状況は悪化している場合があることから、利害関係者に公社のキャッシュ・フローの状況を開示する必要があるものと考える。
55. 現金同等物の定義
現金同等物の定義として、第3項に規定されている「容易に換金可能であり、かつ、価値の変動のリスクが僅少な短期投資」とは具体的に何を意味するか。
A
現金同等物の範囲は公社が判断すべきものであるが、一つの判断を示すならば、例えば取得日から満期日又は償還日までの期間が3ヶ月以内の定期預金、譲渡性預金等が含まれる。なお、法第18条第7項第1号に規定する有価証券のうち、ペイオフ対策として保有するもの等、実質的に預金として保有している有価証券については、貸借対照表の「現金及び預金」に含まれて表示されているため、現金同等物に含まれることとなり、キャッシュ・フロー計算書上はキャッシュ・インフロー、キャッシュ・アウトフローとして表示しない。